学会講座メモ

第74回東京矯正歯科学会学術大会at新宿

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7月16日に1日かけて一般口演、特別講演、症例報告、企業展示が行われました。一般口演から気になったものを2つご紹介します。
1つはマルチブラケット装置による治療での上2本の抜歯の治療終了時の咬み合わせについてです。成長期を過ぎた出っ歯の場合など上だけの抜歯で治療することがあります。そのようにご説明しますと「上だけ抜いて咬み合わせは大丈夫ですか?」と聞かれることがあります。模型できちんとした咬み合わせになることをご説明していますが変な治療法なのではないかとご心配される方もいらっしゃるかもしれません。上だけ抜歯治療の研究が大学病院から発表されたことは“時には上だけ抜歯の治療も必要で一般的である”ということだと思います。上だけ抜歯ですと奥歯の咬み合わせは正常ではなくなりますがきちんと咬みます。発表内容は大臼歯の咬み合わせを3次元的に細かく分析したもので、より良いかみ合わせを得るために装置やワイヤーに工夫が必要かもしれないとの内容でした。
2つ目はマルチブラケット装置のブラケット(歯につける3~5mm位の小さな装置で奥歯はチューブになっていてワイヤーを通します)の脱落の研究です。4種類の接着剤をランダム化比較試験で検討しました。ランダム化比較試験とは試験と対照を公正なくじ引きなどで分けて比較検討したもので客観性が高く、結果の信用度が最高に高いとされるものです。今回の研究では上下マルチブラケット装置の患者さんで右上、左上、左下、右下と4つに分けて4種の接着剤を使用し、どの部位にどの接着剤を使うかをランダム割り付け(割り付けとは分けること)しました。800か所の接着で平均脱落率およそ10%(うーんこんなに高いのかというのが正直な感想です)、およそ4%と低い値(といっても上下で普通24歯接着するならばみなさん一度は脱落を経験することになりますが…)の接着剤がありましたが、当院のブラケットには着かないので使っていません、ごめんなさい。下の大臼歯はなんと脱落率25%で下左右で4か所接着すれば1つは取れてしまう計算です。ブラケットが脱落すると変に歯が動いてしまうことがあり早急に修復が必要です。そのため再度来院してもらって直さなければなりません。10個に1個は取れますから仕方ないですよ~とは言いたくありませんが、一方でこれが現実でありますので、こちらもなるべく取れないよう細心の注意を払って接着しますが患者さんには引き続き「非常に固い物(氷、おせんべい、するめなど)やくっつくもの(ハイチュウ、キャラメル、お餅など)はなるべく避けて頂くよう」お願い申し上げます。ブラケットは治療終了後にきれいに外すため強力に接着することができません、ということをご理解ください。よくついて外すの簡単、は相反していますものね。

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